バックヤードで在庫の数字を詰められながら、フロアに立つ店長の背中をぼんやり見ていた時期があります。何年やっても、行き着く先はあれなのか——休日は少なく、上からは詰められ、下からは頼られ、給料はたいして変わらない。あの人みたいになりたいわけじゃない。でも、辞めて自分に何ができるのかも分からない。そんな行き止まりの感覚を、家電量販店で働いていた頃の僕は毎日抱えていました。
この記事でわかること
・「店長になりたくない」という気持ちが甘えではなく、正当な違和感である理由
・小売の出世ルートしか見えないときに、視野の外にある20代の選択肢
・小売しか経験がなくても評価される、法人営業・IS・CS・SaaSという方向性
・「次で失敗したら後がない」と怯えている人が、最初に頼るべき相手
「店長になりたくない」は甘えではない
まず言いたいのは、店長になりたくないと感じること自体は、あなたの弱さでも甘えでもないということです。目の前にいる先輩や店長が、あなたにとって「ああはなりたくない」ゴールに見えているなら、それは今の環境が用意しているルートが、あなたの望む未来と噛み合っていないだけです。
その道しか用意されていない
小売の現場で上を目指すと、たいていの場合ルートは一本道です。フロアのリーダー、副店長、店長。その先にエリアマネージャーがうっすら見える程度で、しかも上に行くほど責任と拘束時間だけが増えていく。給料の伸びはゆるやかで、「頑張った分だけ報われる」実感が持ちにくい構造になっています。
理不尽に詰められて、突っ立ったまま1日が終わる
数字が伸びないのは、立地も、商品も、客層も、自分ではどうにもできない要素が大きいのに、「お前の接客が悪い」で片づけられる。改善案を出しても現場は変わらない。フロアに立って、頭のどこかで「今日も1日、何も積み上がらなかった」と感じながら退勤する。この虚無感は、真面目な人ほど深く刺さります。
辞めたいけど、小売しかやってない自分に何ができるか分からない
いちばん動けなくなる理由がこれです。接客と品出しとレジ締めしかやってこなかった。数字で語れる実績もない。そんな自分が、他の業界で通用するイメージがまったく湧かない。だから「とりあえずもう少し」と現場に残り、また虚無感が積み重なっていく。
この「自分に何があるのか分からない」という状態を、一人で解こうとすると、まず間違いなく答えは出ません。僕自身、抜け出せたのは自分の頭の中だけで考えるのをやめてからでした。
20代の「経歴が小売だけ」は、思っているほどマイナスではありません。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」では、大学を卒業して就職した人のおよそ3割が3年以内に離職しています。つまり、20代前半〜半ばで環境を変えること自体は、まったく珍しい選択ではありません。むしろ20代は「これまで何をしてきたか」よりも「これから何をしたいか」で評価される数少ない時期です。小売で毎日クレームや理不尽に向き合ってきた耐性、レジ締めで培った数字への正確さ、初対面の客に話しかけ続けた度胸は、営業職では立派な武器になります。
店長ルートの外にある、20代の現実的な選択肢
「小売の外」と言われても具体的にイメージしづらいと思うので、量販店・小売から実際に移りやすく、かつ将来が伸びやすい方向を4つ挙げます。共通するのは、頑張りが数字や成果として自分に返ってくる仕事だということです。
法人営業
個人客ではなく企業を相手にする営業です(BtoB営業とも言います。BtoB(企業向け取引とは?))。小売のBtoC接客で鍛えた「相手の反応を見て話を組み立てる力」がそのまま活きます。土日休みの会社が多く、インセンティブで成果が給料に反映されやすいのも、量販店との大きな違いです。
インサイドセールス
電話やオンラインで見込み客にアプローチする、内勤型の営業です(IS(インサイドセールスとは?))。飛び込みや外回りが苦手でも、腰を据えて会話に集中できる働き方です。トークの型が決まっていることが多く、「何を話すか」を事前に準備できるので、その場のアドリブが苦手な人にも向いています。
カスタマーサクセス
契約後の顧客に寄り添い、使いこなしや継続を支援する仕事です(CS(カスタマーサクセスとは?))。売り込むより「困りごとを解決して喜ばれる」ことが中心なので、接客で「ありがとう」をやりがいにしてきた人と相性がいい職種です。
SaaS業界の営業
クラウド型のソフトを提供する会社の営業です(SaaS(サースとは?))。伸びている業界なので若手の裁量が大きく、未経験からでもキャリアを積み上げやすいのが魅力です。「伸びる場所で自分を試したい」という気持ちがある人ほど、量販店との差を感じられるはずです。
ただ、こうした選択肢は、一人で求人サイトを眺めているだけではまず見つかりません。僕の場合も、「小売から法人営業に行けるなんて思ってもみなかった」という求人を教えてくれたのは、20代の転職を専門に見ているプロでした。あの頃の自分に教えたいのが、次のサポートです。
まとめ:店長になりたくない自分を、責めなくていい
「こんなところで終わるはずがない」という気持ちが心のどこかにあるなら、それは逃げではなく、伸びる場所へ移るためのエネルギーです。守りの転職ではなく、量販店で消耗した時間を取り返しにいく選択肢もあります。
「エージェントに頼るのも不安、そもそも転職を成功させる自信がない」という人には、教わって身につけてから動く選択肢もあります。
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