「お前じゃ営業は無理だろ」——転職活動を始めたばかりの頃、販売時代の先輩にそう言われた。社会人としての人間力が足りない、接客も販売レベルでしかできない、メンタルも弱すぎる。ご丁寧に、理由までセットではっきりと。
あの一言が刺さって動けなくなっている人へ、先に結論を言います。「向いてないと言われたこと」と「本当に向いていないこと」は、まったく別物です。
この記事の結論(先に言います)
・「営業に向いてない」と言われても、原因の多くは能力ではなく環境とのミスマッチ。
・ただし指摘が「半分は当たっている」ことも多い。足りないスキルは、合う環境なら周りが育ててくれる。
・20代は即戦力より“吸収力”で見られる。未経験の挑戦を歓迎する会社は実在する。
・「向いてない営業」と「続けられる営業」は別物。見分けてから動けば、決めつけは覆せる。
「お前には無理」が、いちばん深く刺さってしまう理由
その言葉がこたえるのは、あなた自身がうっすら同じことを思っているからだと思う。僕もそうだった。毎日売り場に立って、お客さんがいない時間はただ突っ立って一日が終わる。上司には「そこにロボットを置いた方がマシ」と詰められる。そんな日々を続けていれば、「自分は仕事ができない人間なんじゃないか」という疑いは、言われる前から胸の中で育っています。
そこへ「お前には無理」が重なると、外から答え合わせをされた気になる。だから効く。でも、その答え合わせは、本当に正しいんでしょうか。
「お客様じゃなく、店長が神様」の職場だった
当時の僕がいた量販店は、社員も販売員も、立場の弱いスタッフも、全員が店長に頭が上がらなかった。気分で配置が変わり、値引きも教育方針もひとりの裁量で決まる。店長がフロアに来ただけで、売り場に合図が飛ぶ。
店舗をよく知る店長に接客を任せたら、上司に怒られた。別のお客様を案内中、手が偶然お子さんに当たっただけで怒られた。お客様本人は怒っていないのに、だ。「誰のために働いているのか分からない」——それが毎日の実感でした。
「向いてない」と言われ続けて、自分でも信じ込む
加点がなく、減点だけ。間違えたら怒られ、丁寧にやれば「遅い」と言われる。逃げ場のない環境に長くいると、「自分はどこへ行っても通用しないのでは」という恐怖が染みついていきます。
そこで転職を考えても、今度は別の不安が来る。「辞めるのが早すぎないか」「次で失敗したら、もう後がないんじゃないか」。この二重の不安こそが、人を動けなくさせる正体でした。
結局、この「次で失敗したら後がない」という不安を、僕は一人では解けませんでした。ほどいてくれたのは、20代の転職を山ほど見てきたプロの視点でした。
先輩の言葉は、半分は当たっていた。
正直に書きます。転職して入社してみて、先輩の指摘は半分は正しかった。社会人としてのスキルは足りていなかったし、電話は苦手で、案内もうまくできなかった。
でも、残りの半分は完全に外れていた。足りなかったスキルは、周りの仲間が教えてくれて、徐々にコツを掴んでいけた。「仕事ができない」のではなく、圧迫されるだけの環境が向いていなかっただけだったんです。向いていないと決めつけられたのは、僕という人間そのものではなく、あの売り場との“組み合わせ”でした。
「昭和の残像」と「令和の営業」は、別の仕事だった
先輩は、転職が決まった僕を笑いました。「どーせ気合いと根性で殴られる会社でしょ」と。壁に数字を貼り出され、外回りで走り疲れ、取引先に土下座する——先輩が思い描く営業は、そういうものでした。
でも、少なくとも僕が入った会社は真逆だった。常に論理的で計画的に物事が進み、活気がありながら思いやりが残っている雰囲気だった。壁への貼り出しも、土下座もない。あれは昭和の残像で、令和の営業はもっとスマートだった——というのが今の実感です。もちろんこれは僕が入った一社の話で、すべての会社がそうだとは言いません。だからこそ、「どの環境を選ぶか」がすべてなんです。
「向いてない営業」と「続けられる営業」を分ける
ひとくちに営業といっても、中身はまるで違います。あなたがつらかったのが「飛び込み・大声・根性」型なら、それが合わなかっただけで、別のタイプなら続けられる可能性は十分あります。内向型でも力を発揮しやすい職種を挙げます。(似た名前のサービスや職種の細かな違いは用語ページも参考にしてください)
インサイドセールス
電話やメールで見込み客にアプローチする内勤型の営業がIS(インサイドセールスとは?)です。僕が移った先がここでした。量販店は「お客さんがいないと何もできない」けれど、ISは時間いっぱいまで自分から動ける。実際、初日から1時間で40件以上かけ続けて、その“量”の文化に衝撃を受けました。飛び込みも接待もなく、自分のやり方ですぐ改善を回せるのが性に合っていました。
カスタマーサクセス
契約後のお客様に寄り添い、使いこなしを支援して継続につなげるのがCS(カスタマーサクセスとは?)です。新規を追いかけ続けるより、関係をじっくり育てる方が得意な人に向いています。「売る」より「支える」仕事です。
法人営業・SaaS領域
個人のお客様が相手の販売(BtoB/BtoCとは?のBtoC)と違い、法人(BtoB)を相手にする営業、とくにSaaS(とは?)の領域は、論理と準備で進む世界です。勢いより、課題を整理して筋道を立てる力が評価される。考えることが苦にならない人ほど、ここで化けます。
とはいえ、「職種を変えても、どうせ面接で言葉に詰まる」と思うかもしれません。僕もそうでした。でも、話すことをキーワードだけ決めて練習したら、不安はかなり消えました。その訓練に、根気よく付き合ってくれるプロがいます。
「無理」と言われてから、僕が実際にやったこと
精神論で終わらせたくないので、数字を出します。先に退職日を決めてから、約2ヶ月の短期戦で動きました。応募した結果はこうです。
内定2社。数字だけ見れば「28社に落ちた」とも言えます。でも、それでよかった。新卒の就活と違って、20代の転職はたくさん落ちていいからです。実際、転職エージェントにはこう言われました。「新卒と違って学力はそこまで見られません。見られるのは最低限のコミュニケーションが取れるかと、これまでの経験の筋が通っているか、その2つだけです」。
対策を広げる余裕はなかったので、僕は「自分と合う仕事内容の分析」だけに時間を使いました。エージェントは4社に登録して、一番密に連絡をくれて練習にも付き合ってくれた1社に絞りました。選んだ決め手は、話し下手で言語化が苦手な僕に真摯に向き合って、良さを見つけてくれたことです。
いちばん効いたのは、具体的なテクニックより、この一言でした。「自分が思うコンプレックスって、意外と相手は思ってないですよ」。弱みが強みに変わるわけじゃない。でも、まだ見つかっていない強みはたくさんある——そう言われて、「社会人として、まだ死んでない」と思い直せたのが大きかった。
正直に書いておくと、転職してすべてが解決したわけではありません。今でも事務作業は苦手で、誤字や数字のずれがたまに出ます。それでも、オンオフがはっきりして、評価が平等な環境は、身体的にも精神的にもずっと楽でした。苦手が消えたんじゃない。苦手を抱えたまま働ける場所に、ようやく移れたんです。
まとめ:決めつけは、環境を変えれば覆せる
「向いてない」の正体が、ただの思い込みなのか本当なのか、一人で判定するのは難しい。あの頃の僕に教えたいのが、プロに強みを言語化してもらう、という手でした。
「エージェントに頼るのも、まだ不安」という人には、転職そのものを教わって身につける、という選択肢もあります。
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