閉店後のバックヤードで、店長に売上表を突きつけられた。「お前が売るより、ロボットが売った方がマシだな」。反論できなかった。その月、僕は携帯32台のうち4台しか売れていなかったからだ。売り場に戻っても、しばらく手が震えていた。
同期はどんどん台数を伸ばしていくのに、僕だけが毎月ワースト付近をうろついていた。朝礼で成績を読み上げられるたびに胃が重くなり、休憩室では笑っているふりをしながら、頭の中では「向いてないのは分かっている。でも、次に行く自信もない」とぐるぐる考えていた。辞めたい気持ちと、辞めても通用しないかもしれない不安が、毎晩せめぎ合っていた。
売り場に立っていても、お客さんに声をかける前に喉が締まる。断られるのが怖いんじゃない。自分が心から良いと思えていないオプションを、笑顔で勧めることそのものが苦しかった。数字が出ないと詰められ、詰められるほど「自分には営業のセンスがない」「地頭が悪いんだ」と思い込んでいった。突っ立っているだけで一日が終わり、家に帰ると何も残っていない。あの頃の僕にとって「強み」なんて、他人事の言葉でしかなかった。
でも、今ならはっきり言える。あれは強みが無かったんじゃない。誠実さや共感性という自分の一番の強みが、まるごとマイナスに働く売り方の中に置かれていただけだった。INFPのあなたが感じている「自信のなさ」も、同じ構造かもしれない。
「売れないのは自分に強みがないからだ」と思い込んでいる
本当は、強みが「無い」んじゃなくて「見えていない」だけのことが多い。押し売りの数字だけで評価される場所にいると、自分の丁寧さや聞く力は数字に現れないから、まるで存在しないものとして扱われる。INFPの強みは、目盛りの荒い量りでは測れないだけだ。
自己PRに書くことが、何も浮かばない
「実績」で書こうとするから浮かばない。あなたの武器は数字じゃなく、お客さんが本音を話してくれた、既存客からの信頼が切れなかった、という関係性の側にある。ここは自分一人だと本当に気づけない。僕も、他人に言語化してもらって初めて「あ、これが強みだったのか」と分かった。自分の中では当たり前すぎて、価値だと気づけていなかっただけだ。
数字で詰められるたびに、自信を削られていく
向かない営業で削られた自信を、その同じ営業の中で取り戻すのはほぼ不可能だ。土俵を変えるしかない。「頑張りが足りない」の問題ではなく、量り方が違う場所に立っているだけ。まずそこを切り分けよう。
「向いてない営業」と「続けられる営業」は別物だ。INFPが消耗するのは、飛び込みや押し売り型のBtoC販売のように、短時間で・数で・多少強引にでも売り切ることが評価される営業。逆に、時間をかけて信頼を積み、相手の課題に本気で寄り添うほど成果になる営業では、あなたの共感性と誠実さがそのまま武器になる。同じ「営業」でも、前者と後者はほとんど別の職種だと思っていい。
強みが活きる転職先の方向性
量販店の販売と地続きに見えて、まったく消耗の種類が違う職種がある。僕が実際に移った先も含めて、INFPの強みが数字になりやすい方向を挙げる。
インサイドセールス
IS(インサイドセールスとは?)は、電話やメールで見込み客とじっくり関係を作る内勤の営業。飛び込みも押し売りもない。相手の話を丁寧に聞ける人ほど成果が出るので、INFPの聞く力が数字に直結する。僕が量販店の次に一番救われたのがこの職種だった。
カスタマーサクセス
CS(カスタマーサクセスとは?)は、契約後のお客さんに寄り添って成功まで伴走する仕事。売り切って終わりではなく、長く信頼を育てる役割なので、誠実さと共感性が評価軸そのものになる。「売る」より「支える」で力を出せる人に向く。
無形商材・SaaSの法人営業
SaaS(サブスク型ソフトとは?)や無形商材のBtoB(法人向け取引とは?)営業は、課題をヒアリングして解決策を一緒に組み立てる提案型が主流。強引に押すより、相手の困りごとを深く理解する力が武器になる。量販店で身につけた「人の様子を読む力」がそのまま活きる。
その後、僕がどうなったか
「向いてない」で終わる話は世の中に山ほどある。でも本当に知りたいのは、辞めた後どこへ行ってどうなったか、のはずだ。だから正直に書く。
量販店を辞めると決めてから、僕は十社以上を受けた。はじめの半分くらいは当たり前のように落ちた。それでもエージェントに「新卒と違って、20代の転職はたくさん落ちて当たり前。一社ずつ言葉が整っていくから大丈夫」と言われて、ようやく落ちることが怖くなくなった。
法人営業、そしてインサイドセールスへ移って、変わったことは大きい。心から良いと思えないものを勧める必要がなくなり、相手の課題に向き合うほど数字が積み上がった。「ロボットが売った方がマシ」と言われた人間が、信頼で数字を作れるようになった。初めてお客さんから「あなたに相談してよかった」と言われた日のことは、今でもはっきり覚えている。量販店では一度も言われなかった言葉だった。適性診断で自分の強みを言語化してもらってからは、面接でも「自分には何もない」と黙り込むことがなくなった。
ただ、変わらなかったこともある。大人数の飲み会や初対面への飛び込みは、今でも苦手だ。新しい相手への一本目の電話は、正直まだ少し緊張する。それでいい、と今は思う。苦手を消すのではなく、苦手が邪魔にならない場所を選べたことが、僕にとっての転職の成功だった。万能な解決なんてなかった。置き場所を変えただけだ。
「自分には何もない」は、言語化してもらったら思い込みでした。あの頃の僕に一番教えたいのがこれです。
まとめ
「転職を成功させる自信がない」という人には、エージェントに頼るだけでなく、教わって身につけるという選択肢もあります。
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